大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和34年(し)71号 決定 1960年2月09日

主文

本件特別抗告を棄却する。

理由

本件特別抗告申立書によれば、申立人らは、反対尋問の段階にある証人中島忠蔵については、検察官に対する同証人の検察官作成にかかる供述調書の閲覧請求は当然許容されるべきものであるのにかかわらず、閲覧請求権の存否も判断せず、漫然申立人らの申立を却下した原決定は違法であるから取消れるべきである旨主張するに止まり、刑訴四〇五条に規定する事由があることを理由とするものではないから、本件特別抗告の申立は同四三三条一項の要件を欠き、不適法である。

(なお本件供述調書のような書面については、検察官は必ずその取調を請求しなければならないが、検察官に公判での取調請求義務が生ずるのは、刑訴三二一条一項二号後段所定の場合に限られ、検察官が未だ取調を請求することを決定するに至らない証拠書類についてまで、公判において取調を請求すると否とにかかわりなく、あらかじめ被告人若しくは弁護人に閲覧させるべき義務はなく、申立人らに所論の如き閲覧請求権はないと解すべきことは、昭和三四年(し)第六〇号、同年一二月二六日当小法廷決定の趣旨とするところであり、原判決は正当として維持すべきものである。)

よって刑訴四三四条、四二六条一項に従い、裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例